ビオトープ管理士の基礎知識
開発事業等の計画に際し、環境に配慮する対策を選定する場合には、「ミティゲーション五原則」によることが原則です。
ミティゲーション(mitigation)とは、緩和や軽減といった意味です。
開発を行うと、環境に全く影響を与えないことは不可能ですが、できるかぎり緩和・軽減しましょうよ。そのための五原則がありますよ。ということです。
この原則を適用するには、(1)から順次検討していきます。なるべく上位の方策を採用することが、環境への影響をより緩和できます。
(1)回避(avoidance):保存すべき環境要素が、計画範囲に含まれる場合、可能であるならば、その範囲を除外する。または、迂回する計画にすること。
(2)最小化(minimization):素材、規模、時期等の選定により、影響をできるだけ少なくするように計画する。一般的に生態系保全工法と呼ばれるものに当たる。天然素材を用いたり、伝統工法を採用したりする方法が考えられる。
(3)修正(rectifying):事業の実施により、新たな生息・生育空間を創出したり、ネットワーク化を推進したりすること。三面張り水路の改修に際して、生態系に配慮した水路へ復元することなどがある。
(4)影響の軽減/消失(reduction/elimination):工事実施中に、環境への影響を軽減する工夫を行うこと。汚濁水を直接流さないための沈砂地を設置したり、工事期間中に一時的に生き物を引越しさせたりすること。
(5)代償(compensation):事業効果の発現のためには、どうしても生物の生息地や生育地にダメージを与えざるを得ない場合、代替地を用意して新たにビオトープを創出すること。
仕事をする以上(1)回避ということは、ほとんど不可能ですので、(2)以下の手法によることが多いかと思います。(3)修正というのは、自然再生推進法の精神なのかな?と思います。
自己満足ではなく生き物主体で、適切な方法での環境への負荷を減らす努力をしなければなりませんね。
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ビオトープの形態や配置を考慮するに当たっては、国際自然保護連合(IUCN)が提唱する「生物生息空間の形態・配置の6つの原則」を参考にすることが効率的である。
左の各図は、左側がよりすぐれた状態を表している。
(1)「広大化」・・・生物生息空間はなるべく広い方が良い。
(2)「団地化」・・・同面積なら分割された状態よりも一つの方が良い。
(3)「集合化」・・・分割する場合には、分散させない方が良い。
(4)「等間隔化」・・・線上に集合させるより、等間隔に集合させた方が良い。
(5)「連結化」・・・不連続な生物空間は、生態的回廊(コリドー)で連結した方が良い。
(6)「円形化」・・・生物空間の形態はできる限り丸い方が良い。
これらをまとめると、以下のようになる。「高次消費者が生息可能な良質な生物空間をより広い面積で、より円形に近い形で塊として確保し、それらを生態的回廊で相互に連結することが、最も効率的なビオトープの形態及び配置の仕方である。」
地域の生物多様性を表現することは難しいが、地域の指標となる種を把握することは、地域の生態系を評価し保全する上で重要な意味がある。指標となる種について以下に5つあげる。
(1)生態的指標種(ecological indicators):同様の生育場所や環境条件要求性をもつ種群を代表する種。
(2)キーストーン種(keystone species):群集における生物間相互作用と多様性の要をなしている種。そのような種を失うと生物群集や生態系が異なるものに変質してしまうと考えられる。
(3)アンブレラ種(umbrella species):生育地面積要求性の大きい種。その種の生存を保障することでおのずから多数の種の生存が確保される。大型の肉食哺乳類や猛禽類など。
(4)象徴種(flagship species):その美しさや魅力によって世間に特定の生育場所の保護をアピールすることに役立つ種。
(5)危急種(vulnerale species):希少種や絶滅の危険の高い種。これらの種を保護することで多くのふつうの種の生育条件が確保される。
野生生物絶滅の要因は、次の3つが考えられる。
(1)生息地の破壊
[1]全域消滅
[2]縮小
[3]分断--->エッジ効果(基礎知識5)
[4]島状化(isolation)
[5]質的低下・・・有害物質などによる
(2)乱獲
(3)移入生物
[1]食害
[2]病害・寄生
[3]抑圧
[4]雑種形成
[5]生殖撹乱
前回の「生息地破壊の内容」に出てきた「分断」がなぜ野生生物の絶滅の要因になるのか?というお話です。
左上図は、海に浮かぶ「島」を表現しています。このような生息場所では、島全体が安全な生息場所となります(斜線部分)。
しかし、左下図のように陸地において孤立した生息場所の場合、この全てが安全とは言えません。
左下図の森林部分のうち、周縁部からある距離を入り込んだ部分は、外界からの影響により安全ではなくなっています。このことを「エッジ効果(edge effect)」と呼びます。
その結果、左下図の場合、安全な生息場所は左上図の場合に比べて狭まります。生息場所を分断していくと、周縁部に相当する部分が増えるため、結果的に、潰した面積以上に安全な生息場所を消滅させることになるのです。
では、「前回の生息地破壊の内容」に出てきた「島状化」とは何でしょうか?
左上図のように、元々「島」であり、生態系が形成されてきた場所のことではありません。そのような場所は、その範囲に適した生態系が形成されているからです。
問題になるのは、元々広くネットワーク化されていた生息場所が、開発の影響を受けて狭められ、周囲を都市や工場に取り囲まれてしまい「島状」となった場合です。このようになると、見かけ上は生息場所を保全しているように見えても、実はそうではないことがあります。
例えば、ある植物の花粉を媒介していた昆虫が、周囲の開発の影響を受けて減少、あるいは絶滅してしまった場合です。この生息場所は孤立していますから、他の生息場所からの補給も期待できません。こうなると、ある植物は、花粉の授受がうまくできずに種子生産が減少していくことになるのです。
生物多様性や生態系の保全については、重要であるとの考えが一般的になってきた。開発事業などを行う場合でも、環境に対する影響の調査や、環境に負荷をかけない手法の検討が重要とされている。
しかし、そのような考えが広まる一方で、「何のために生き物を守るのか?」、「人間が快適に暮らすための施設を作るためなら、自然を破壊してもいい」、「生き物を守るために税金を使うのはおかしい」といった考えを持つ人たちも少なくない。
では、そもそも何のために生物多様性が必要なのでしょうか?
(1)生き物が絶滅していくような環境は、ヒトにとっても好ましい生存環境ではない。
(2)生き物は生物資源として重要である。
大きくくくると、この2つの理由が考えられる。
(1)の考え方は、自分さえ良ければいいと考える人たちにとっては、あまり意味の無い理由かもしれません。
(2)の考え方は、さらにいくつかに分類ができる。
<1>直接的使用価値:
食料、燃料、医薬品などとして直接消費される。または木材などのように加工され消費されるような日々の生活を支える資源としての価値。
<2>非消費的使用価値:
バードウォッチングなどのレクリエーションにおいて利用される価値。
<3>予備的使用価値:
将来の潜在的利用のために残しておく価値。現在は利用されていないが、いずれ利用するかもしれないから残しておこうという考え方。遺伝子資源の確保などもこれにあたる。
<4>倫理的存在価値:
一寸の虫にも五分の神(たましい)的な考え方。生き物たちは、同じ自然の中で暮らすパートナーであって、ヒトの都合で命を奪ってはならないとする倫理的な価値観である。
生物多様性(biodiversity)という概念は、下記の4つの階層をもつと考えられます。
生物多様性の保全を考える上では、それぞれの階層での多様性を保全することが重要です。
(1) 遺伝子(gene)レベル
(2) 種(species)・個体群(population)レベル
(3) 群集(community)・生態系(ecosystem)レベル
(4) 景観(landscape)レベル
(1) 遺伝子(gene)レベル
「種」は生物分類の基本単位ですが、水系が異なるなど地理的に隔離された状態にある個体群間では、遺伝子形質が異なっていることがあります。
かつて日本人にとって身近な生き物の一つであったメダカを例にしても、生息地によって遺伝子型が異なっており、日本には10以上の遺伝子型のメダカが存在すると言われています。
山口県の川にメダカがいるからと言って、安易にバケツに入れて持ち帰り、福岡県の川に放流することは、遺伝子の多様性の観点からいかがなものでしょうか?
身近な川にホタルを呼び戻すためには、なるべく同一の水系からカワニナ(ホタルの餌になる巻貝)を採取し養殖するなどが一般に行われています。
また、突然変異などによって、あるストレスへの耐性を持った遺伝子を持つ個体が、個体群に含まれていることなども遺伝子レベルの多様性と言えます。
(2) 種(species)・個体群(population)レベル
種のレベルの多様性はいろんな生き物がいるということで、生物多様性として一般に考えられる概念ではないでしょうか?
(3)群集(community)・生態系(ecosystem)レベル
生態系レベルの多様性が保たれることは、生き物にとってはいろんな生息環境が保たれていることになり、種のレベルの多様性に大きく関わっています。
(4) 景観(landscape)レベル
景観は、いくつもの生態系を包含する空間を指しますから、景観の多様性は即生態系の多様性につながります。
多様な景観や生態系は、多様な生き物たちによって形成されていますが、これらの生き物たちは、互いに手をつなぎあい仲良く暮らしているのではありません。限られた生息地、餌を奪い合っているのです。もちろん、利害関係の一致から助け合っている生き物もいますけれども...
アレロパシー(allelopathy)は、ライバルの生息を阻害する作用です。
植物は、様々な化学物質を生産・放出し、他種または同種の植物の発芽や生育を阻害しています。これをアレロパシー(他感作用)と言います。
空き地にびっしりと広がるセイタカアワダチソウを思い浮かべてください。花が咲くと特に、恐ろしいほどに真っ黄っ黄ですよね。セイタカアワダチソウは、その名のとおり背が高いので、背の低い植物は日照を遮られるためほとんど見られません。でも、それだけではありません。セイタカアワダチソウは、他の植物の生育を阻害する化学物質も出しています。これでは、他の植物はたまったものではありません。
あの一面のセイタカアワダチソウの秘密はここにあったのです。
まあ、いずれは自分の毒で元気をなくしていくらしいですけど...
アレロパシーは、医学にも役立っています。そう、抗生物質です。抗生物質はアオカビが、他のカビや細菌を抑制するために生産する化学物質なのです。
人間は、これを発見しちゃっかりと医学に利用しています。
今日の帰りの電車の中で、座席が一つ空きましたので座りました。すると、隣の男性から強烈な汗の臭いがしてきました...。私は、せっかく見つけた座席を放棄せざるを得ませんでした。これも、アレロパシー!?
生態系を形成する種は、お互い作用しあいながらネットワークを構成しています。この生き物と生き物のかかわりあいのすべてが、生物間相互作用(biological interaction)です。
生物間相互作用には、大まかに次の3つに分類できます。
(1) 競争関係(competition)
(2) 敵対関係(antagonism)
(3) 相利関係(mutualism)
(1) 競争関係(competition)
同じ資源を利用する種どうしの間に作用しています。前回のアレロパシーもこれに該当する作用です。
(2) 敵対関係(antagonism)
・「食うッ食われる」という捕食ッ被食の関係
・寄生者ッ宿主の関係
などがこれに当たります。
(3) 相利関係(mutualism)
・植物と根粒バクテリアにみられる共生
・植物とその花粉を運ぶ昆虫の関係
などがこれに当たります。
これら生物間相互作用は、生物の進化にも影響を及ぼしたと考えられます。
特に、競争関係や敵対関係は、生物を進化へ向かわせる推進力になったことでしょう。
子供が棚の中から勝手にお菓子を出して食べるので、隠し場所を変えますが、すぐにかぎつけられてしまった経験はありませんか?手の届かない高い所に隠しても、踏み台を持ってきて手を伸ばしていませんか?これって「競争関係」がもたらした「進化」なのでしょうか!?...違うでしょうねぇ「知恵がついただけ」でしょうね。
共進化(evolution)とは、生物間相互作用によって関わりあう種と種がお互いに進化していくことです。
例えば、食べられる側が防御を堅くするために棘(とげ)を生やしたり、体内に毒性の化学物質を生産したりした場合はどうでしょう。食べる側も、棘や毒に対して抵抗できるよう進化していきます。
殺虫剤や農薬を使用する上で、共進化が問題となります。
殺虫剤をまくと、対象の害虫はほぼ死滅しますが、たまたま抵抗性を持った個体がいて生き残った場合など、その殺虫剤に対して抵抗性を持った個体群として進化します。すると、もっと毒性の強い殺虫剤を使用しなければならなくなります。
しかし、ここでもまた抵抗性を持つ個体群への進化が危惧されます。
これは、いわゆるイタチゴッコのように続くことになるでしょう。軍拡競争にも例えられます。
毒性の強すぎる殺虫剤は、当然、人間にとってや他の生き物にとっても害があります。
レイチェル・カーソンは、「沈黙の春
」を1962年に著し、化学殺虫剤の危険性について警告しています。
このような反省から、現在では、化学殺虫剤だけに頼らない防除方法として、総合的有害生物管理(Integrated Pest Management:IPM)という方法が注目されています。
総合的有害生物管理-IPM-(Integrated Pest Management)とは、化学殺虫剤を使うことだけに頼らず、あらゆる有効な防除方法を組み合わせることにより、総合的に病害虫を減らすことです。化学殺虫剤による、環境への負荷や人体への悪影響を回避できるため、注目されている考え方です。
化学殺虫剤による防除が主流であった頃は、年に何回という具合に散布時期を決めていました。散布量についても同様です。この考え方では、害虫がいるかいないかは問題にならないのです。より効率的に作業を行うために、マニュアルどおりに化学殺虫剤が散布されていたのです。このような防除方法は、害虫以外の生き物(天敵も含まれる)まで死滅させたり、人体にも悪影響を及ぼしたり、害虫の抵抗性を高めたりする結果を招きました。
IPMでは、害虫の発生しにくい環境にすることと、害虫の発生状況を監視することが中心になります。栽培体系の工夫や混作などで害虫の発生は抑えられます。そして、害虫がいないうちは当然殺虫剤は散布しません。また、もし害虫がいたからといって、すぐに殺虫剤を散布するのではありません。農作物への被害が許容できる範囲内であるうちは、殺虫剤を散布せずに監視を続けるのです。天敵の活動によって、害虫がまたいなくなることも考えられるからです。
殺虫剤は、最終手段です。やむをえず散布する場合でも、散布範囲、量は必要最小限にとどめるようにします。
それでは、IPMはまったく新しい考え方なのでしょうか?
いえ、そうではありません。
化学殺虫剤のなかった頃は、当たり前に行われていたことです。
しかし、このようなやり方は、非常に労力がかかります。経済発展の中で、効率性や生産性が追求されると、殺虫剤による一斉防除へと向かうことになったのです。
IPMを取り入れることは、昔のやり方に戻ることなのです。人手と時間をかけながら安全に防除するやり方に...
宇根豊さんをご存知でしょうか?宇根さんは、農業改良普及員をしていた頃、マニュアルどおりに殺虫剤を散布するよう指導する立場でした。いつしか疑問を感じ出した宇根さんは、「虫見板」を発明します。虫見板を片手に田んぼに入り、稲についている虫を調べてみました。そして、殺虫剤を散布する必要がないと判断された場合には、殺虫剤を散布するのをやめました。減農薬運動の始まりです。
現在、宇根さんは、農と自然の研究所代表理事として、環境農業の確立に向けて頑張っておられます。
アリー効果(alle effect)とは、個体が集合することによって適応度が増加する効果のことです。
ですから、開発による生息地の縮小等で、個体密度が低くなると、アリー効果が消失し、その個体群は絶滅の危険性が高まります。
個体密度が低くなると、配偶相手に出会うことが困難になったり、天敵に対する集団的な防御が機能しなくなったりするなどの現象が生じるからです。
近交弱勢(inbreeding depression)とは、近親交配によって生存力や産子数・種子数が低下することです。
個体密度が低くなると、配偶する個体どうしが近縁者である確率が高くなります。こうして近親交配が重ねられると、遺伝子の多様性が失われてきます。そして、その個体群が保有していた有害な遺伝子が蓄積されると、有害遺伝子が発現する確率が高まり、子供が虚弱になったり繁殖力が劣ったりする現象が起こるのです。
競馬の世界では、優秀な種馬の血を濃くするような配合を行い、優れた形質を発現させることが一般的に行われます。いわゆるインブリード配合というやつです。しかし、この配合方法も近交弱勢と背中合わせのものです。ですから、父親と祖父が同じ種馬になるような極端な近親配合は行われませんし、血統的に遠い系統どうしの配合を適度に混ぜる(アウトブリード配合)などが行われています。競馬の世界でも、遺伝子の多様性の保存は重要なのです。
ある個体群が、様々な原因によりその規模が縮小され、絶滅への道を進み始めたとします。個体数の減少は、前述の「近交弱勢」を生じやすくし、また、「アリー効果」の消失による適応度の低下を招くことになります。このようにして、適応度の低下は、さらに適応度の低下を加速していきます。
この効果を、中心に向かって流れが加速されていく渦(vortex)にたとえて、「ボルテックス効果(vortex effect)」と呼びます。
一度、崖を転げ落ち出すと止まらないのと同じ状況でしょうか。
ある個体群にとって、個体数の減少がなぜよくないかはわかりました。では、絶滅の恐れがない最低限の個体数とは、どの程度なのでしょうか?
個体群サイズと絶滅確率との関係の分析は、様々な場面で必要となります。このようなリスク評価の手法が個体群存続可能性分析(PVA:population viability analysis)です。
または、同じ略称になりますが、個体群絶滅可能性分析(PVA:population vulnerability analysis)と呼ばれる場合もあります。
PVAによって、「最小存続可能個体数(MVP:minimal viable population)」を明らかにすることができます。MVPは、「100年間、95%の確率で存続する個体群サイズ」などという基準を設けてコンピュータシミュレーションにより求めます。
北米で実施されたビッグホーンシープの捕獲移入計画では、個体群が絶滅したかつての生息域の120ヶ所に個体群が移入されました。その後の追跡調査では、次のことが明らかになりました。
・当初の移入個体数が50頭未満の場合、その個体群は50年以内に絶滅した。
・一方、100頭以上の場合は、ほとんどすべての個体群が存続した。ある保全対象種の生息地を確保する場合には、MVPを考慮して保全区域を定める必要があるということです。
野生生物の絶滅が地球規模で進行している状況に対して、有効な対策を講じるために、各地で絶滅のおそれのある種をリストアップする作業が行われています。
この作業の成果として作成されるリスト(絶滅のおそれのある種のリスト)がレッドリスト(red list)です。
レッドリストを掲載した出版物は、レッドデータブックと呼ばれており、様々な調査主体によって出版されています。
レッドデータブックでの危険性のランクづけに採用されている基準は、国際自然保護連合(IUCN)が定めています。この基準を設ける1つの方法として、個体群存続可能性分析(PVA)によって絶滅確率を査定することもとり入れられています。
■危機のランク■
┌絶滅種(extinct species)
│ ├狭義の絶滅(extinct:EX)
│ └野生絶滅(extinct in the wild:EW)
│
├絶滅危惧種(threatened species)
│ ├絶滅危惧IA類(critically endangered:CR)---深刻な危機
│ ├絶滅危惧IB類(endangered:EN)---危機
│ └絶滅危惧II類(vulnerable:VU)---危急
│
└低リスク種(lower risk species:LR)
├準絶滅危惧種(near threatened species:nt)
└その他の低リスク種
絶滅危惧種をさらに3つのカテゴリー(CR、EN、VU)に分けるために、IUCNが定めた評価基準は下表のとおりです。
基準 CR EN VU A 急激な減少 10年または3世代で20%未満に減少 10年または3世代で50%未満に減少 10年または3世代で80%未満に減少 B 狭い分布域 分布域が100km2未満または生息地が10km2未満 分布域が5,000km2未満または生息地が500km2未満 分布域が20,000km2未満または生息地が200km2未満 C 小集団 成熟個体250個体未満 成熟個体2,500個体未満 成熟個体10,000個体未満 D1特に小集団 成熟個体50個体未満 成熟個体250個体未満 成熟個体1,000個体未満 D2特に狭い分布域 --- --- 100km2または5ヶ所未満 E 絶滅確率 10年または3世代後に50%以上の確率で絶滅の可能性あり 20年または5世代後に20%以上の確率で絶滅の可能性あり 100年間に10%以上の確率で絶滅の可能性あり
特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律ッいわゆる外来生物法が平成17年6月1日に施行されました。ブラックバスを特定外来生物に指定するか否かで、環境団体や釣り業界を巻き込んで論争を起こしました。結局、小池百合子環境大臣の英断により、ブラックバスは特定外来生物に指定されました。
■目的■
特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止すること。
■特定外来生物とは■
・ 海外起源の外来生物(概ね明治元年以降に導入・侵入したもの)。
・ 生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの。
・ 上記被害を及ぼすおそれがあるもの。
以上の外来生物の中から政令で指定される。
■特定外来生物の規制■
・ 飼養等の原則禁止(特別な場合には許可される)
├飼育
├栽培
├保管
└運搬
・ 輸入の原則禁止(飼養等の許可を受けているものは輸入できる)
・ 野外へ放つ、植える及びまくことの禁止
・ 許可を受けて飼養等する者が、許可を受けていない者に対して譲渡、引渡しなどをすることの禁止。
※ 特定外来生物を野外において捕まえた場合に、その場ですぐに放すことは規制の対象とはならない。(キャッチアンドリリースなど)
■特定外来生物の防除■
・ 被害がすでに生じている場合またはおそれがある場合で、必要であると判断された場合は防除を行う。
・ 国が防除を行う際に、必要な経費の一部または全部を、原因者(逃した者など)に負担させることができる。
■罰則■
違反の内容に応じて、4段階の罰則(懲役、罰金)が規定されている。
■未判定外来生物■
特定外来生物とは別に、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼす疑いがあるか、実態がよくわかっていない海外起源の外来生物は「未判定外来生物」に指定され、輸入する場合には事前に届け出る必要がある。
⇒ 環境省 自然環境局の外来生物法のページ
外来生物法で規制の対象となる特定外来生物は、政令で指定されます。
現在の指定リストは、環境省のホームページで確認できます。時々(試験前は特に)目を通しておくといいでしょう。法律の施行時よりも増えていますねぇ。
「景観緑三法」は、全国各地で美しい景観・豊かな緑の形成を促進するために、平成16年12月17日に施行された法律です。
名前から推察できるとおり、関連する3つの法律から構成されています。
┌景観法
│
├都市緑地保全法の一部を改正する法律
│ ├都市緑地保全法の一部改正
│ ├都市公園法の一部改正
│ ├首都圏近郊緑地保全法の一部改正
│ ├近畿圏の保全区域の整備に関する法律の一部改正
│ └都市計画法の一部改正
│
└景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
├都市計画法の一部改正
├建築基準法の一部改正
├屋外広告物法の一部改正
├都市開発資金の貸付けに関する法律の一部改正
├幹線道路の沿道の整備に関する法律の一部改正
├集落地域整備法の一部改正
├密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律の一部改正
├鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律の一部改正
├自衛隊法の一部改正
├都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律
│ の一部改正
├農業振興地域の整備に関する法律の一部改正
├都市緑地法の一部改正
└特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための
特別措置に関する法律の一部改正
上記のように、実は、景観法の制定+17法の一部改正という構成になっており、「三法?」という印象を受けます。まずは、「三法」をしっかり頭に入れ、概観をつかんでおきましょう。
では、簡単に景観緑三法のポイントを整理します。
以下では、三法に次のような略称を用います。
「景観法」ッッ>「景観法」
「景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」ッッ>「景観法関係法整備法」
「都市緑地保全法の一部を改正する法律」ッッ>「都市緑地法」
■■景観法■■
■背景・課題■
現在500弱の地方公共団体が自主条例として景観条例を制定し、景観の整備・保全の取り組みを行っているが、次のような課題が見えてきた。
・ 景観を整備・保全するための国民共通の基本理念が未確立であること。
・ 自主条例に基づく行為の届出勧告等の手法では実効性に薄いこと。
・ 国としての税・財政上の支援が不十分であること。
これらから、景観の意義やその整備・保全の必要性を明確にするとともに、いざという場合の一定の強制力を地方公共団体に付与する必要があった。
■目的■
・ 都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進すること。
・ 美しく風格のある国土を形成すること。
・ 潤いのある豊かな生活環境の創造すること。
・ 個性的で活力ある地域社会の実現を図ること。
■特徴■
┌景観を整備・保全するための基本理念の明確化
│ ├良好な景観は、現在及び将来における国民共通の資産
│ ├景観形成には、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、
│ │ 経済活動等との調和が不可欠
│ ├景観形成は、地域の個性を伸ばすよう多様な形成を図るべき
│ ├景観形成には、観光や地域の活性化への配慮が必要
│ └景観形成は、住民、事業者、行政の協働によりすすめるべき
│
│
├国、地方公共団体、事業者、国民それぞれの責務の明確化
│
├景観形成のための行為規制を行う仕組みの創設
│ ├景観計画は、住民・NPOによる提案を可能にしたこと
│ ├景観計画区域内に、景観農業振興地域整備計画を定めることが可能
│ ├景観整備機構による、農地の利用権取得、管理を可能にしたこと
│ ├「電線共同溝の整備等に関する特別措置法」の特例を定め、
│ │ 道路の無電柱化の促進を図ること
│ └景観重要建造物として、建築物、工作物を、
│ 景観重要樹木として樹木を指定できること
│
└景観形成のための支援措置の創設
├年度途中に予算配分できる「景観形成事業推進費」の設定
├景観重要建造物及びその敷地について、相続税の軽減評価
└景観計画区域内の土地を景観整備機構等へ譲渡した場合の特別控除
■■景観法関係法整備法■■
景観法の施行に伴い必要となる13法律の一部改正を行うための法律です。
自衛隊法まで関係してくるのは興味深いです。
■屋外広告物法の一部改正■
景観を阻害する違反広告物を減らすために下記内容を改正するものです。
・ 景観行政を担う市町村による条例策定
・ 屋外広告物法の許可対象区域を全国に拡大
・ 規制の実効性の確保
・ 屋外広告業の登録制の導入
この改正により、より多種の違反広告をすぐに除去することが可能となりました。
■■都市緑地法■■
都市における緑の減少(特に民有緑地の減少)への対策として下記内容の改正を行っています。
・ 緑の基本計画の記載事項を拡充し、緑地の保全・緑化と都市公園の整備を総合的に推進
・ 緑地保全地域制度の創設
・ 地区計画の活用
・ 緑化地域制度の創設
・ 立体公園制度の創設
・ 多様な主体による公園管理の仕組みを整備なかなか全容のつかめない『景観緑三法』ですが、平たく言ってしまうと、「今まで、勝手気ままな開発に任せるままにしておいたことにより個性を失い、見苦しくなってきた景観を整備・保全しようよ。そのために、景観法を作ったし、17法の一部改正もしなくちゃいけないのよ。」ということでしょうか。まとめすぎ?
自然再生推進法は、平成15年1月1日に施行された法律です。
これから開発される地域での代償的なビオトープの創出ではなく、過去の開発行為等により破壊されてしまった自然を取り戻すこと(自然再生)を目的とした法律です。
■対象■
河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林、その他の自然環境
■自然再生事業の行為■
┌保全:良好な自然環境が現存している場所において、
│ その状態を積極的に維持する行為
│
├再生:自然環境が損なわれた地域において、
│ 損なわれた自然環境を取り戻す行為
│
├創出:大都市など自然環境がほとんど失われた地域において、
│ 大規模な緑の空間の造成などにより、その地域の自然生態系を
│ 取り戻す行為
└維持管理:再生された自然環境の状況をモニタリングし、
その状態を長期間にわたって維持するために必要な管理を行う行為
■実施者■
地域の多様な実施者による発意・参加を期待している点がポイントです。
多様な実施者とは、
・ NPO
・ 民間団体
・ 地方公共団体
・ 国
などです。
■事業の実施■
1 実施者の発意により、「自然再生協議会」を組織する。
2 自然再生協議会は、「自然再生全体構想」を策定し、
対象となる区域、目的、参加者の役割分担を定める。
3 実施者は、「自然再生事業実施計画」を策定する。
4 大臣、知事、専門家等の助言を受けて事業が開始される。
※ コンクリート護岸で直線化された川を、元のような植生豊かな川に戻すような事業を、自然再生に取り組もうという意欲を持ったNPOや、民間団体による発意によって立ち上げることのできる画期的な法律だと思います。
植生は、いつも同じ状態に見えてそうではありません。その場所の条件においての安定した状態に向かって、変化し続けています。
このことを「遷移(succession)」といいます。そして、最終的に行きつく状態を「極相(climax)」といいます。
例えば、温帯に位置し温暖で湿度の高い日本において、放置された荒地があった場合はどうなるでしょうか?
まず、一年生の草が生えるでしょう。種は、近くの草むらから飛んでくるかもしれませんし、鳥のフンに混じって落ちてくるかもしれません。土の中で眠っていた種が、目を覚ましたのかもしれません。
やがて、ススキやセイタカアワダチソウのような背の高い草に覆われるでしょう。
地下水位の高い場所は、葦だらけになるかもしれません。
このような状態も長くは続きません。いずれ樹木が芽生え、若い森ができます。
森も、変化していきます。最初の森は、陽樹という明るい場所で種子が生育できる樹木(アカマツ、ヤナギなど)により形成されます。木が生育していき、森の中が暗くなってくると、陽樹の種子は生育できなくなりますから、しだいにブナ、モミなどの陰樹へと入れ替わっていきます。
植生は、このように遷移していくと考えられます。
日本における荒地とヨーロッパにおける荒地では、行きつく先(極相)が違うことは言うまでもありません。高温で乾燥した西アジアやサハラ地域では、荒地を放っておいても荒地のままですね。たぶん。
ただし、昔は、ある地域とそこの極相とは1対1の関係であると考えられていましたが、現在では、必ずしもゴールは一つではないと考えられています。遷移が始まった時点での、様々な要因によって、ゴールが変わってくると考えられています。
太古の昔から人の手が入らず、遷移が進行した結果、安定的な生態系を形成している自然を「原生自然(Wilderness)」と言います。人間の開発などにより、原生自然は減少の一途をたどっています。そのため、原生自然を人類共通の財産として守り残していくために、世界自然遺産の登録が行われています。
日本では、白神山地や屋久島が世界自然遺産に登録されており、今年、新たに知床が登録されることになりました。これら原生自然は、人為が加わわらずに残された貴重な場所として、その重要さは広く認知されています。
では、人為の加わっている自然は、貴重ではないのでしょうか?美しくないのでしょうか?
私は、そうは思いません。目にすると何故か心安らぎ、懐かしい気持ちさえ感じさせてくれる田んぼや里はどうでしょう。あの美しい農山村の風景は、間違いなく人の手によって作り出されたものです。里山もそうです。人の手によって管理(下草刈りや間伐など)されなければ、美しい里山にはなりません。
人為が加わることによって、いわば遷移を止めた状態なのです。このような自然を「二次的自然(Secondary Nature)」と言います。
田んぼは、元は、河川の後背湿地だったかもしれませんし、森だったかもしれません。人々が開墾し、土地を平らにし、あぜを作って水を溜めることにより田んぼになったのです。
そして、毎年繰り返される営農によって、遷移を止めているのです。
近頃増えている耕作放棄地では、人為がなくなったために遷移が始まっています。背の高い草がはびこり、いずれは森になるかもしれません。それはそれでいいじゃないかとおっしゃる人もいます。そうかもしれません。でも、田んぼという特殊な土地条件が、多種多様な生態系を育んできたことも確かです。そして美しい景観をも形成してきたのです。
現在、田んぼを食料生産工場としてではなく、貴重な生態系として維持管理していくための方策が模索されています。営農にかかる直接支払いや、都市住民による援農ボランティアなどです。
大型機械や化学物質に頼らない農業は、非常に手間がかかりますが、その手間こそがメダカやドジョウ、赤トンボ、カエルの合唱、あぜの美しい花を育んでいるのです。
つい熱くなり、脱線してしまいました。すみません。
植物の種子が発芽するためには、発芽条件を満たされなくてはなりません。要求される発芽条件は、種によって様々です。温度、湿度、埋没深、光度などや、一定期間ある低温化に置かれる必要がある低温条件などで、その値も様々です。
これらの発芽条件が満たされない種子は、どうなるのでしょうか?種によっては、すぐに死んでしまう種子もありますが、冬眠状態になって数年〜数10年生存する種子もあります。
冬眠状態になった種子が長い年月をかけて蓄積されているため、植生のある土壌には数え切れない種子が眠っていると考えられます。
このような状態を「土壌シードバンク(soil seed bank)」と言います。
河川の氾濫や伐採によって裸地になってしまった土地も、しばらく放置しておくと草が生えてきます。周辺の生態系から風で飛ばされた種子や、鳥によって運ばれた種子などが多いでしょうが、土壌シードバンクから供給され、長い冬眠から目覚めた種子も少なからずあると考えられます。
霞ヶ浦の堆積土を浚渫し、浚渫土を野積みにしておいたところ、危急種とされていたオニバスが発芽し突如群落を形成したような例もあるそうです。
破壊された自然を再生する際に、よそからの種子や苗を持ち込む前に、現地の土壌シードバンクの利用の可否を検討することは、本当の意味の自然再生につながると言えます。
実際に、植生計画地の近辺から採取した土壌を用いて覆土を行い、植生の回復を成功させた例もあるそうです。
これからは、法面保護一つにしても、安易に外来芝の種子を吹き付けることを避けるようになるかもしれませんね。
ご近所の林の落葉の下の土を、少し掘ってポットに入れてみませんか?何か生えてくるかもしれませんよ。
河川を横断して設けられ魚類の移動を阻害する構造物には、魚道(fishladder/fishway)を設置して魚類への影響の軽減、除去をはかります。
魚道には、様々な型式があります。
┌(1) プールタイプ魚道
│ ├アイスハーバー型魚道
│ ├階段式魚道
│ ├らせん式魚道
│ └扇型魚道
│
├(2) 水路タイプ魚道
│ └粗石付き斜路式魚道
│
├(3) 阻流板式魚道
│ ├バーチカルスロット式魚道(深導流壁式魚道)
│ ├デニール式魚道
│ └舟通し型魚道
│
└(4) 複合型魚道
それぞれのタイプの概要について次回から説明します。
魚道水路に隔壁を設け、魚が休息できる場所としてプール部分を確保し、プール部分が階段的・断続的に連続することで高度差を稼ぎ、魚を上らせる形式の魚道をプールタイプ魚道と言います。
プールタイプ魚道は、次の4タイプに分けることができます。
(1) アイスハーバー型魚道
(2) 階段式魚道
(3) らせん式魚道
(4) 扇型魚道
(1) アイスハーバー型魚道
魚道水路に隔壁を階段式に配置し、プール部分を設ける形式です。隔壁は、魚道水路の中央が非越流部(高い隔壁)に、両側が越流部(低い隔壁)となっており、水位の変動に比較的よく対応できる形式と言えます。
遡上魚は、魚道水路中央の緩流部で休息し、気を見て越流部に突進していきます。
(2) 階段式魚道
魚道水路に、水平部と切り欠き部のある隔壁を階段状に配置した形式です。日本でもよく採用される形式です。
魚道水路の幅が同じであれば、アイスハーバー型魚道より断面が広く、魚の利用度が高いのが長所です。ただし、流量の変動にはアイスハーバー型魚道に劣るのが弱点です。
(3) らせん式魚道
発電用ダムや砂防堰堤に魚道を設置する場合など、場所の制約がある場合には、アイスハーバー型魚道や階段式魚道をらせん状にします。
用地の節約や魚道入口を堰軸に近づけるなどの長所がありますが、流況が乱れていることにより遡上は困難と考えられます。
(4) 扇型魚道
遡上魚が魚道入口を見つけやすくするため、魚道入口を広くした形式です。
(1) 粗石付き斜路式魚道
水路の斜面に粗石を埋め込んだ魚道です。適切な粗石の配置と勾配であれば、魚類の遡上を容易にすることができます。
ただし、粗石の形状にばらつきがあるため計画図面に表現しづらいことや、魚道勾配をプールタイプ魚道より緩くするため延長が長くなることなどが問題点です。魚類だけでなく、子供も登りそうな魚道です。景観にも溶け込みやすいので、延長の確保できる箇所では採用してみたい魚道です。
魚道水路に設置した阻流板により、流速分布を制御し魚類の遡上をうながす方式の魚道を「阻流板式魚道」と言います。
(1) バーチカルスロット式魚道
(2) デニール式魚道
(3) 舟通し型魚道
(1) バーチカルスロット式魚道
魚道水路に、広い阻流壁と狭い阻流壁を設置し、その隙間(スロット)から噴出する流れを制御することで、魚類の遡上可能な状態を作り出す魚道です。
(2) デニール式魚道
魚道水路の水路底に、45度の角度で狭い間隔で阻流板を設置した魚道です。阻流板は、将棋の駒を逆さにしたような(ホームベースのキャッチャー向き)形状がくり抜かれています。このことによって、水深が深くなるにつれて次第に流速が落ちていくという、流速分布の特徴を持っています。遡上魚は、自らの遊泳力に応じた経路を選ぶといわれます。
(3) 舟通し型魚道
舟を通すことを兼用としている魚道で、阻流板は上部にV字のカットがされています。底部付近に流速の緩い部分がわずかに見られる程度であり、気泡流や乱流の激しさから魚類の遡上は困難であるようです。
道路上で発生する野生動物の交通事故死をロードキル(runover death)と言います。交通安全上の問題となっているほか、貴重な野生動物の減少の原因ともなっています。
被害生物の多くは、哺乳類(ウサギ、タヌキ、キツネなど)や鳥類(トビ、ハト、カラス、キジなど)です。高速道路では、被害生物の約4割をタヌキが占めており、ネコ、ウサギと続きます。これは、一般道でもあまり変わらない傾向にあると考えられます。
ロードキルを防止するためには、以下のような対策が行われています。
(1) 侵入防止フェンス等の設置。
(2) けもの道連絡のため、ボックスカルバート、オーバーブリッジ、暗渠などの設置。
(3) 標識によるドライバーへの注意喚起。
(4) 被害生物の親や子などの侵入を防止するため、巡回による死骸等の回収。(1)〜(3)では、景観を損ないますからできるかぎり避けたい方策です。やはり、可能ならばルート変更(ミティゲーション五原則の最上位にあたる『回避』)によって、生息地の分断を起こさないルート計画を行うべきです。
ロードキルってすごい言葉だと思いませんか?和製英語みたいだし...
ドライブ中に動物の死骸を見かけたら、「ロードキルだっ!」って口に出してみましょう。あまりの言葉に同乗者がびっくりしますよ。
そして、「タヌキだっ」って言いましょう。4割当たりです。
余裕があったら、車を止めて道路の周囲の環境を観察してみましょう。どうしたらロードキルが防げるか具体的に考えましょう。
建物の屋上や壁面などに人工の地盤を作り、そこに植物を植えて緑化することを「屋上緑化(vegitation on the roof)」と言います。
■効果■
(1) ヒートアイランド軽減
(2) 建物保護
(3) 景観創出
(4) ビオトープネットワーク化
(1) ヒートアイランド軽減
植物は、光合成を行う際に二酸化炭素(CO2)を吸収します。二酸化炭素は温室効果ガスですから、二酸化炭素を吸収することはヒートアイランドを軽減する効果があります。
また、植物は光合成や呼吸を行う際に気孔を開きますが、その時に水分が一緒に大気中に放出されます(蒸散)。蒸散によって周囲の気温を下げることができます(打ち水効果)。
(2) 建物保護
コンクリートなどを大気中に露出させておくと劣化します。建物の表面を植物で被覆することは、建物の保護になります。
(3) 景観創出
無機質になりがちな都市の景観をやわらげ、やすらぎのある景観を創出することができます。
(4) ビオトープネットワーク化
ビオトープネットワークを創出することができます。都市では、広大なビオトープはなかなか作れませんが、小さくても数を増やすことでネットワーク化が図れます。
■課題■
(1) 土壌の重量
(2) 保水・給水
(1) 土壌の重量
植物を植えるためには、土壌が必要となります。しかし、土壌は重量があるため、建物の構造上の制約となります。軽量な人工土壌などが開発され普及しています。
(2) 保水・給水
植物の生育に必要な要素のうち、光はふんだんにあるとして、水はどうでしょうか?
建物の表面は、乾燥しやすく水分が不足しがちです。前項の土壌には、高い保水性も求められます。また、降雨の少ない時期には給水する必要がありますから、給水方法や装置についても注意が必要です。
乾燥に強いCAM植物の導入が有効ですが、これはこれで問題があるとする方もおられます...
「屋上緑化なんて、面積も狭いし意味が無い!」、「自己満足の人工自然だ!」などなど言われる方もいるでしょう。 あなたはどう思いますか?
生物多様性基本法が平成20年6月6日に公布、施行されました。
□■□生物の多様性の意義
・人間は、生物の多様性のもたらす恵沢の享受により生存している。
・生物の多様性は人類の存続の基盤である。
・生物の多様性は、地域における固有の財産として地域独自の文化の多様性をも支えている。
□■□生物多様性の危機
・人間の開発等による生物種の絶滅や生態系の破壊。
・社会経済情勢の変化に伴う人間の活動の縮小による里山等の劣化。
・外来種等による生態系のかく乱。
・地球温暖化等の急速な気候変動による重大な影響。
□■□目的
・生物の多様性の保全
・持続可能な利用
に関する施策をを総合的かつ計画的に推進し、
・豊かな生物の多様性を保全
・自然と共生する社会の実現
・地球環境の保全への寄与
を目的とする。
□■□基本原則
・野生生物の種の保存等が図られるとともに、多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて保全されること。
・国土及び自然資源を持続可能な方法で利用すること。
・予防的な取組みおよび事業着手後の監視・評価・反映など、いわゆる順応的管理による対応。
・長期的な観点からの取組み。
・地球温暖化の防止との関連。
□■□生物多様性戦略
・国は、生物多様性国家戦略を策定する(平成19年11月27日に第三次戦略を策定済み)。
・都道府県及び市町村は、生物多様性地域戦略を策定するよう努める。
・生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する目標等を定める。
□■□基本的施策
1 地域の生物の多様性の保全
・生物の多様性の保全上重要と認められる地域の保全、再生等の措置
・里山等の二次的自然を保全するための措置
・地域間の生物の移動その他の有機的なつながり(ビオトープネットワーク)に着目。
2 野生生物の種の多様性の保全等
・野生生物の生息、生育の状況把握、評価
・生息環境、生育環境の保全
・捕獲等及び譲渡し等の規制
・保護、増殖のための事業
・野生生物が生態系、生活環境、農林水産業へ被害を及ぼすおそれがある場合には、防除や個体数の管理等を行う。
3 外来生物等による被害の防止
・外来生物
・遺伝子組換え生物
・化学物質
4 国土及び自然資源の適切な利用等の推進
5 生物資源の適正な利用の推進
6 生物の多様性に配慮した事業活動の促進
・グリーン調達(環境負荷に配慮した製品の優先的利用)
・エコツーリズム
・有機農業
7 地球温暖化の防止等に資する施策の推進
・二酸化炭素を吸収・固定する森林、里山、草原、湿原等の保全。
・間伐、採草等が促進されるバイオマス利用の促進
8 多様な主体の連携及び協働並びに自発的な活動の促進等
・多様な主体との連携、協働
・政策形成の公正性、透明性の確保
・ナショナル・トラスト(寄付等により自然保護等を目的として土地を取得する活動)などの自発的活動
9 調査等の推進
10 科学技術の振興
11 国民の理解の増進
12 事業計画の立案の段階等での生物の多様性に係る環境影響評価の推進
13 国際的な連携の確保及び国際協力の推進
生物多様性や環境保全に関するトレンドというか、キーワードが満載された条文だなぁと感じました。これらのキーワードが法の中に位置づけられ非常に意義のあるものだと思いました。平成20年度の管理士試験の本命では?
生きものの生息、生育環境について検討するときには、対象とする生きものにとって必要な要素・要因について総合的に行う必要があります。
リービッヒの最小律は、もともと、植物の生長における栄養素のバランスについてリービッヒが提唱した考え方です。植物の生長に不可欠であるN(窒素)、P(リン酸)、K(カリウム)がいずれかだけを多く与えても植物の生長には影響せず、量の少ない要素によって頭打ちされてしまうというものです。
現在では、要素相互の補完関係などもあり、必ずしもこの法則はあたらないとされているようですが、バランスよく環境を整える必要があるという考え方は、生きものの生息、生育環境を検討する上で、参考になると思います。
リービッヒの最小律をわかりやすく説明したものにドベネックの桶があります。
必要な要素・要因を桶の一枚一枚の板に見立て、それぞれの要素・要因の量に応じて長さが変えてあるものです。この桶に水を注いでいくとどうなるでしょうか?
そうです。一番短い板の高さまでしか満たされませんね。
ある生きもの(あるいは生態系)の生息、生育環境に必要な要素・要因を分析し、その環境に不足しているものをバランスよく補うよう整えていくことが重要ではないでしょうか。
生きものは「共進化」(ビオトープ管理士の基礎知識10)によって新しい形態を獲得してきましたが、擬装と擬態は、主に守る側が獲得した形態です。
□■□擬装ッ「かくれんぼ」
捕食者(食べる側)に見つからないように、背景の色彩や形などにまぎれるような形態。
森の中で、何気なく木にもたれて一休みしていた時に、ふと気づくと顔のすぐ横にトゲだらけの大きな毛虫がいて飛び上がったことがあります。樹皮にそっくりで本当に気づかなかったんです。鳥から身を守るかくれんぼですね。
背景にまぎれる色彩を「隠蔽色」といい、被食者(食べられる側)の場合には、特に「保護色」といいます。
□■□擬態ッ「目立ちたがり」
擬態の場合は、むしろ積極的に自分の形態を目立たせることによって身を守る手段です。
黄色と黒の縞模様を見ると、チクッとした刺激を感じませんか?このような色を「警戒色」または「標識色」といいます。
真似されるほうを「モデル」、真似するほうを「ミミック」といいます。
○ミューラー擬態
ハチのように、共通した色彩を持つことで他の動物に警戒させること。
○ベーツ擬態
他の動物に警戒されている動物に色彩を似せること。
○ペッカム擬態
攻撃する側が、色彩や形態を獲物に似せること。
○メルテンス擬態
猛毒を持つものが、中程度の毒を持つものに似せること。(猛毒では捕食者が学習できず、また襲われることになるため、捕食者が恐れる中程度の毒をもつものに似せる。)擬態にはいろいろなものがあり、それぞれ研究者の名前で呼ばれますが、なかなか覚えづらいので私は次のように覚えました。
ミューラー擬態:鏡(ミラー)に映ったように同じ格好をした仲間たち。ハチや敬礼した警察官などをイメージしましょう。
ベーツ擬態:普通のおっさんが、警察官の制服を着て威張っていますよ!しかも時々舌を出しています。ベーッて・・・
ペッカム擬態:イギリス選手が、ジャパンブルーを身にまとい日本ゴールに近づいてきました!べ、ベッカム!!警察官の制服を着て舌を出しながら逃走する泥棒をベーツ擬態と思っていましたが、かくれんぼですから、「擬装」になるのかな。
- ミティゲーション5原則
- 生物生息空間六原則
- 指標となる種について
- 野生生物絶滅の要因
- エッジ効果
- 生物多様性の価値
- 生物多様性の階層
- アレロパシー(他感作用)
- 生物間相互作用
- 共進化
- 総合的有害生物管理
- アリー効果
- 近交弱勢
- ボルテックス効果
- 個体群存続可能性分析
- レッドリストと危機のランク
- 外来生物法
- 特定外来生物
- 景観緑三法
- 景観緑三法のポイント
- 自然再生推進法
- 遷移と極相
- 原生自然と二次的自然
- 土壌シードバンク
- 魚道の型式
- プールタイプ魚道
- 水路タイプ魚道
- 阻流板式魚道
- ロードキル
- 屋上緑化
- 生物多様性基本法
- リービッヒの最小律とドベネックの桶
- 擬装と擬態

